今は健康かもしれないが、高齢者になって医療費、介護費としていくらあればいいのか心配する人も多い。日本の医療制度を踏まえ、老後の医療費に関して考察する。
高額介護合算療養費制度
高額な医療費、介護費が発生した場合、所得区分により年間の自己負担の上限が決まっている。住民税非課税世帯では、70歳以下は年間34万、70歳以上75歳未満は年間31万、75歳以上は年間31万が上限。まずこの制度により、最大でも月3万程度であるため、高額な医療費は心配する必要はない。
また高額な医療費が発生している状況では、海外旅行等に行っている場合ではないため、交際費、旅行費もかからないことになり、生活費予算の範囲内でカバーできると想定。
高度先進医療に対する考え
では保険の範囲内で対応できない高度先進医療に関しては、どう考えるか。高度先進医療は全額自己負担となるため、高額療養費制度の範囲外となる。月額500円程度の民間の医療保険のオプションで高度先進医療に対する補償を提供するものもある。
まず、高度先進医療は一般的ではないため、仮にお金がたくさんあったとしても、その医療を受けるのに順番待ちが発生し必ず受けられる訳では無い。また、どんな医療にも対応できるのではなく、あらかじめリスト化された手術に対してのみ保険金が支払われる。日本で高度先進医療として認められているものしか扱えないため、保険を契約したとしても、例えば米国のみで提供される超先進的な手術はこの保険の対象外となる。
未来のある子供であれば、どんなにお金をかけてでも直したいということもあるかと思うが、老後に先進医療が必要なほどのマニアックな病気になった場合には、運命として諦めた方が良い。
住民税非課税世帯について
高額療養費の上限金額は、世帯所得によって上限額が異なる。老後に定期的に病院のお世話になるリスクを考え、できれば住民税非課税世帯となれるような選択肢を持っておくほうが良い。
居住する市区町村にもよるが、住民税非課税世帯となるには、年間の年金収入が、夫211万、妻152万以内である必要がある。基礎年金78万を引くと、厚生年金は夫133万、妻74万が上限である。
夫が先に死亡した場合、妻は遺族厚生年金として、夫の厚生年金の3/4を受け取ることができるが、遺族厚生年金は非課税であるため、上記の住民税非課税世帯の収入には入らない。そのためほとんどのケースで夫死亡後は妻は住民税非課税世帯になれることになる。なお、妻がかつて働いていた場合、夫の遺族厚生年金か妻本人の厚生年金のいずれかを選択して受給することとなり両方受給することはできない。
夫婦2人で年金を受け取る場合、211万、152万の上限に達しないようにしておく。厚生年金受給額が年133万、74万を超えるようであれば、60歳から厚生年金の繰上げ受給を行い毎年の受給額を減らしておく。
株式の売却益や配当がある場合、健康なときは確定申告をして税金を取り戻すほうが有利になる場合も多い。医療費が定常的に高額療養費の上限にかかるくらい発生してきた場合は、特定口座による申告不要制度を活用すれば、課税所得はは年金収入のみとなるため、翌年は住民税非課税世帯になることができる。
住民税非課税世帯になることができるオプションを持つため、厚生年金の受給額を調整することも検討する。年金の受給タイミングは一度決めると変更できないため慎重に検討する。
民間医療保険は必要か
高額療養費制度で上限額が決まっているため、医療保険は不要。そもそも保険とは、確率は低いが発生したら払いきれない出費に対して備えるべきものであり、短期の入院日額のような小銭は、貯金でカバーすべき。老後に限らず、300万程度貯金がたまったら医療保険はもう解約してよい。
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