FIREに必要な資産金額

FIREを決断するにあたり、老後の生活が回ることの確信を得る必要がある。老後の生活費、公的年金、資産および運用収入の観点から、FIREに必要な資産金額を考える

今後のライフイベント

人生100年時代と言われているが、まずはいつまで生きるか、夫婦2人死ぬまでを考える。現在の年齢を50歳、公的年金受給開始65歳、男性健康寿命72歳、女性健康寿命75歳、男性平均寿命81歳、女性平均寿命87歳と考える。現在50歳とするなら、夫婦2名であと31年、妻のみで6年生活ができればよい。ただし平均寿命で死ななかった場合にも生活ができるように考える必要がある(長生きリスク)。いつ死ぬかわからない長生きリスクを考えると、資産の取り崩しで生活する前提とはできないため、資産は減らさずキャッシュフローベースで考える必要がある。

老後の最低生活費とゆたかな老後資金

生命保険文化センタが毎年出している、「生活保障に関する調査」から老後の生活費について考える。この資料によると、70歳以上老夫婦2名世帯の最低生活費は月24万、ゆたかな老後の生活費は月38万。この組織は言ってしまえば生命保険を売りたい組織であるため、多少上ブレして計算していると想定する。また、内閣統計局の「家計調査」によると、老夫婦2名世帯の平均生活費は85歳以上で21万。65歳台で28万。単身平均生活費は65歳以上で月15万。住宅費が異様に低く持ち家比率も高いため平均値の前提として持ち家で住宅ローン返済済みが前提。

上記より、65歳以降の夫婦2人の最低生活費は月24万(年288万)、夫死亡後は月15万(年180万)。豊かな老後のための夫婦2人の生活費は月38万(年456万/+168万)、夫死亡後は月22万(年264万/+84万)と見積もる。ただし持ち家で住宅ローン返済済み前提。

上記の夫婦および夫死亡後の最低生活費は生活保護の金額(2名月18万、1名月13万)を上回るため妥当と判断できる。老後の医療費、介護費用に関しては別途考察するが平均値に含まれる金額で問題ない。

豊かな老後生活費に関しては、健康なうちの消費レベルは人によって違うだろうが、齢を取り外出モチベーションが下がってくると、平均生活費に近づいてくると思われる。また余裕分に関しては足りなければ我慢ができる類のものであるため、上ブレした生命保険文化センタの数値を信じることにする。

最低生活費と公的年金からのキャッシュフロー

可能であれば、最低生活費は公的年金から、余裕分は資産所得から賄えるのがベスト。投資がうまく行かない年は海外旅行を我慢すれば良い。65歳以上夫婦2名の最低生活費は年間288万。うち2名の基礎年金満額で156万あるため、残りの132万は厚生年金でカバーしたい。夫死亡後の最低生活費は年180万。妻の基礎年金で78万あるため、残りの102万は夫の遺族厚生年金でカバーしたい。遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の3/4にあたるため、夫の厚生年金報酬比例分は136万あるとベスト。残された妻は夫の遺族厚生年金か自身の厚生年金のどちらか多いほうの金額までしか受給できない。

つまり、厚生年金の年間付与見込みが136万になるまで働いてから退職すれば、65歳以降は、永遠に最低限の生活を送れることになる。現時点の厚生年金の年間付与見込みは年金ネットから確認できる。

余裕分と資産所得からのキャッシュフロー

65歳以降永遠に豊かな老後を送るためには、最低生活費とは別に、年間168万のキャッシュフローを生み出す必要がある。このキャッシュフローは、年金余剰分(妻と夫の厚生年金合計から132万を超える部分)と、配当・株式の値上がり分で生み出したい。年金余剰分をゼロとし、巷で言われている4%ルール(株式値上がり・配当で投資資産から平均年4%の利回りが見込める)で計算すると、年金受給開始の65歳時点で4200万の投資資産があれば永遠に豊かな老後を送れることになる。この4200万は元本に手をつけないため、資産は減らず夫婦2名が死んだときも残る。

FIREから年金受給開始までの生活費

このことから、65歳で4200万残るまで取り崩して良いことになる。元気なうちに海外旅行等にも行きたいだろうから、退職後〜65歳までで仮に夫婦2名で年間600万使うこととする。(豊かな老後より年150万さらに余裕を見る)

45歳時点での資産をAとすると、A x (1.04)^(65-年齢) – (65-年齢) x 600万 > 4200万 を満たす金額が貯まれば今から永遠に豊かな生活を行うことができる。これを解くと45歳なら7393万、50歳なら7329万。55歳なら6890万。60歳なら5917万。

idecoや確定拠出年金は、60歳から受け取れるため、この資産額に含めることができる。子供がいる場合には、上記の金額に子育てに関わる残金額を追加する。

実質4%で運用できる自信をつける

運用利益を平均で年4%上げるのは、そこまで難しいことではない。実際、S&P500は、過去平均年15%程度の利益が出ている。S&P500の投資信託を買うだけで十分に達成可能である。ただし、今まで資産運用していなかった人が退職金全部を投資に回すのはおすすめしない。少なくとも10年以上、自分で資産運用をしてみて、自分の資産での平均利回りを算出し、暴落が来ても平均4%以上で回せる自信をつけてからFIREすべきである。

インフレ率は原則考慮不要

30年後、50年後もこの計算式は通じるのか。インフレ率が平均2%なら、30年後には物価は現在の2倍になり、生活費も2倍になる。

公的年金はインフレ調整機能があるため、物価が2倍になったら原則受給額も2倍になるため考慮不要。

実質4%で投資運用を行う場合、日本のインフレ率が2%なら、6%で運用する必要がある。ただし株式は物価のひとつであるため、理論的にはインフレ率の分だけ株価は上がるはずである。定期預金や長期の債券はインフレ調整機能がないため、インフレに負ける可能性がある。原則株式・不動産・商品で運用する必要がある。

45歳以下では辞めてはいけない

必要な金額が溜まったからと言って、45歳以下で退職はおすすめしない。遺族厚生年金を受け取るには、25年以上の年金積立実績が必要になる。つまり、43歳で退職して44歳で死亡した場合、年金納付済み期間が25年に満たず、かつ、厚生年金被保険者でない、ということから、一生涯遺族厚生年金が出ないことになる。

サラリーマンの生涯年収からみたFIRE金額の妥当性検証

サラリーマンの生涯年収からFIRE金額の妥当性を検証してみる。平均的な大卒サラリーマンの60歳までの生涯年収は2億7000万。税引き後の生涯手取で約2億円。住宅を5000万とすると残り1億5000万。つまり大卒22歳時点で家と1億5000万の資産があれば働かずかつ投資をしなくても60歳までの38年間を資産を取り崩して人並みに暮らせることになる。このケースでの23年経過後45歳時点での理論残高は5921万円。60歳〜65歳までの生活費を足すと7894万。FIREに必要な金額とほぼ一致するため計算は妥当といえる。

FIREの条件まとめ

  • 住宅を購入し65歳までに住宅ローンを完済する
  • 夫婦2名とも国民年金を満額払う
  • 夫の厚生年金報酬比例部分を136万まで積み上げる
  • 4%で資産運用できる確信を持てるだけの投資実績を積む
  • 45歳時点で7393万貯める(子育て資金除く)

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